〔その4〕生後155日~

22日目〈罰当たり〉

今日の《み~》は最高に元気でした。
手足は上まであげられるようになったしパパに向かって盛んに何かしゃべっていたし、ミルクは一気のみをするし。
本当に元気!脈が150台くらいまで下がった。
熱はなくてきっとすごく楽なのね。このままどんどん良くなってくれたら本当にいいのにね。
このくらい動いてくれるととっても嬉しい。
だけどこのままだと離乳食って病院で食べ始めるのかな~。
あ~ぁ。こんなこと何で降りかかってきたの?みんな幸せだったのに。
ごめんね《み~》ちゃん。
あなたが生まれる前ママがあんな事考えていたからバチが当たったんだ。ごめんね。

*《み~》が生まれる前、私は外へ出る仕事をしていました。
子連れで出来る仕事だったんだけど、次女が幼稚園にはいるのが決まってから妊娠しているのがわかったので、また子供を抱えての仕事になっちゃうのか~と、ちょっとがっかりしたことがあったんです。
子供は大好きで3人欲しいと思っていたんだから本来なら喜ぶはずなのに、魔が差したというか、とにかく一度でもそんな風に思った自分が嫌で、こんな事になったのは、神が与え賜うた私への罰なんだと考えました。
だからずっと自分を責めていたんです。

23日目〈慣れ〉

先生に話を聞いたらやっぱり検査の結果は良くないらしい。
心のうにもお腹にも水がたまっていて、それは血管の炎症が治まっていないせいで、ガンマグロブリンをもう一度やろうかどうか悩んでいるそうです。
私はとにかく《み~》がもっともっともっと元気になってくれることだけが望みです。
こんなふうに毎日出かけていって顔を見て帰ってくるだけの日々。
何かしてあげたくても何もしてあげられなくて。
本当ならベビーカーでお散歩をしたり、オムツ替えたり、ミルクあげたりしてるはずなのに。
彼女がいなくて今、自由だけど(!?)気楽だけど(!!??)これに慣れちゃいそうな気がして(!)怖い。
でもでもこんなこと考えてるともう《み~》は帰ってこないようになっちゃう気がして怖い。
こわいこわい。

*なんかこのときの自分が一番嫌でした。
乳飲み子を抱えていない生活に慣れちゃって、あたりまえになりつつあって怖かった。

24日目〈ママっ子〉

 やっぱりグロブリン投与をまた始めました。
これで炎症が治まってくれるなら最高なんだけど。
看護婦さんの話では昼間、機嫌のとてもいい時、あやすと笑うみたいなの。
でも私が行く時間にはまだ一度も笑わない。ママの顔なんてもう忘れちゃったのかしら。淋しい。
あなたが3人の中で一番ママっ子だったのに。
泣いていてもママが抱くとすぐ泣きやんでしまう子だったのに。ショックだな~。
なんかあなたに対して自分の子という認識が生まれる前に、病気に奪われちゃったみたい。
うまく言えないけどへんな気持ち。
あなたの笑顔をパパは覚えてるって!
でもママは忘れちゃった!こんなことあり!?

*《み~》のママをやらなくなってからずいぶんたっていたので、自分の子供に対する可愛さとは違ってしまったような気持ちでした。
彼女が私をわからないのがショックだったくせに、自分も彼女をわからなくなっていたのかも知れません。

25日目〈おめめ〉

ついに酸素テントが開けられました。
今日行ったら捲ってあってそれでも全然苦しそうじゃないし、血管中の酸素も96~99で、これは普通の数値だそうです。
もう大丈夫みたい。ひとまずよかった!
でもまた明日になったらテント閉められちゃうって可能性もあるからあまり喜ばないことにしよう。
あやすとじーっと見ていて笑いそうなんだけど、どうしても笑わない。
帰ってくるときまでにねんねしてくれなくて、おめめが “か・え・ら・な・い・で”って言ってるように悲しそうにみつめるので帰りづらかった。

*入院する何日か前から寝てばかりいて笑っていなかったので、笑顔なんてずっとお目にかかってなかったんです。
この時は気づかなかったんだけど、いま思えばだんだん表情が出てきたんですね。
帰りがけにとても淋しそうな表情をするようになりました。

26日目〈笑顔〉

やったやった~っ!《み~》ちゃんが笑った!テントも完全にどけられてすっかり大丈夫になったんです。
検査の結果も入院以来初めて上向きになってきました!
検査データの話をしていただいたけど先生も嬉しそうだった。
とても重症で苦労をおかけしたな~と改めて思ってしまいました。
このまま本当に良い方向に行ってくれたらと願うだけ。
もう二度とあんな状態に戻らないでね。お願いだから。
元気になるなら暖かくなるまで病院に置いといてもらってもいいよね。
神様!このまま《み~》を守ってくださいね!

*心電図、心臓のエコー、血液検査などは毎週のようにしていました。
この日初めて血液検査の結果が前回より上向いて先生も一安心の様子でした。
危機は脱したという感じがして、この夜は久しぶりによく眠れました。

27日目〈不安〉

今日は昨日より脈が速くてちょっと心配でした。
苦しがってはいないけどあんまり気分良さそうじゃなくて、本当は血液検査の結果もあまり良くなっていなかったんじゃないかって気がしちゃった。
今日は寝てばかり。
こんな時に限って先生は不在。頭の中を不安がよぎってしまう。

*やっぱり!って感じでした。これでもか、これでもかっておそってくる不安。
押しつぶされそうで息が出来ませんでした。

28日目〈Mountain〉

今日の《み~》ちゃんは、にっこにっこにっこにこちゃんでした。
おめめもぱっちりしてだいぶすっきりしたし、唇もとてもきれいになったし、肌もすべすべに戻ったみたい。
声を出して笑うことは元々出来ないうちに入院しちゃったので、これだけ笑顔を見せてくれれば合格だと思うことにしましょう。
あとは少しずつ少しずつでいいから検査結果がずっと上向きに行ってくれたらいいな~。
先生もはっきりと「山は越えたかしらね」と言ってくださった。
これで本当に安心なのかな。

*今までで一番嬉しかった!いっぱい笑ってくれたんですもの!